「いったい、アロマテラピーって何なんですか?」
アロマテラピーに興味をもって会いに来てくれた30代の女性の、ドキッとしたまっすぐな一言です。
アロマテラピーが日本に伝わってきたのが1980年代
今では女性だけにとどまらず男性にも「アロマテラピー」という言葉は認知され、さまざまなシーンや業界で活用されてきています。
まだ、なんとなくしか知らないけれど、「アロマテラピーに興味がある」という方は多いのではないでしょうか?
興味はあって、なんとなくのイメージはあるけれど。あらためて「アロマテラピーとは何だろう?」と考えてみるとすっとは出てこないのではないでしょうか。
今回は初心者の方に向けてアロマテラピーとはどんなものなのかについてを簡単にご紹介し、日常生活で活用できるシーンや楽しみ方、使い方や注意点についてまとめました。
アロマテラピーとは
アロマテラピーとは、芳香植物や薬用植物の花、葉、茎、果実、種子、樹皮、根などから抽出したエッセンスを利用して行われる自然療法の一つです。
このエッセンスには、私たちのココロとカラダのトラブルを穏やかに作用することがわかっており、健康維持や美容に活用されています。
アロマテラピーは心地よい香りを楽しみながら、痛みを伴うことなく行えるセラピーです。
このアロマテラピーという用語は、アロマテラピーの協会や団体によってさまざまな表現がされています。
フランス式アロマテラピーをベースとしたNARD JAPANナードアロマテラピー協会は次のように『アロマテラピー』を定義づけています。
NARD JAPANのアロマテラピーの用語説明
「植物精油や植物油、ハーブウォーターを用いた健康管理法、および療法」
アロマテラピーでは植物精油、植物油、芳香蒸留水(ハーブウォーター)を使用します。
これらには人の身体に作用する多種多様な活性物質があります。
活性物質とは生体内のさまざまな生理活動を調節したり、影響を与えたり、活性化したりする化学物質の総称のことを指します。
これらの生理活性物質は私たちのもともと持っている自然治癒力をサポートし、生活の質をよくする効果が期待できます。
植物から得られるエッセンスを使って、わたしたちの日常生活の健康管理に役立てようというのがアロマテラピーというわけです。
アロマテラピーは、次の3つの作用を期待して使います。
- からだに対する作用
- 肌、局所に対する作用
- ココロに対する作用
です。
具体的なアロマテラピーを使うシーンは次の通りになります。
- ストレスケア
神経を静めて、リラックスさせる
気分転換(リフレッシュ)
前向きな気持ち、メンタルサポート - 睡眠の質の向上
- からだの不調の予防とケア
呼吸器系 風邪の予防と、症状の緩和
消化器系 胃腸の不調緩和
肩こり、腰痛の緩和
免疫系を強化・調整をサポートする
女性ホルモンのバランスを調える
むくみケア - ダイエット、禁煙サポート
- 健康で美しい肌を目指す
- スキンシップ・コミュニケーションツールとして活用
- 認知症の予防の可能性とケア
などがあります。
アロマテラピーとは。その誕生の物語と立役者たち
アロマテラピーとは、意外にも昔からある言葉ではありません。
この言葉は、1927年ごろにフランス人の化学者であるルネ・モーリス・ガットフォセがアロマ(芳香)と療法(セラピー)の二つを合わせた造語を作りました。
アロマテラピーとは。日本語で簡単に表現すると、「芳香療法」となります。
ルネ・モーリス・ガットフォセがこの用語を作った背景には、自身が実験中に負った火傷が関係しています。
感染症をおこし、火傷の回復が芳しくないため治療にアロマテラピーを活用したところ劇的に回復を進めた、というエピソードはとても有名です。
そして、「アロマテラピー」が広く人々に知られるように精力的に活動した人物の名はルネ・モーリスガットフォセの弟子であるマルグリット・モーリー女史と、フランス人軍医のジャン・バルネの二人の名があげられます。
3人はアロマテラピーの研究と実践を行い、精力的に活動し人々にそれを伝えた人達です。
それぞれの活動の方向性により、のちに日本における「フランス式アロマテラピー」、「イギリス式アロマテラピー」と呼び方を変えるきっかけとなっています。
そのあたりの歴史にも触れてみるとアロマテラピーとは?について深く知ることができます。
どんな仕組み?アロマテラピーの効果について
それでは、アロマテラピーとはどんな効果や仕組みがあるのか?について簡単に解説していきます。
アロマテラピーがからだとココロに作用する仕組みには大きく分けて3つの経路があります。
- 嗅覚を通じて、脳へ
- 呼吸により微量の香り分子が肺へ
- 皮膚塗布による香り分子の吸収
です。
嗅覚を通じて脳へ~ココロとカラダに作用
精油の作用経路の一つ目は『嗅覚から脳』です。
精油の成分は揮発しやすい、とても小さな分子たちの集まりです。
この香り成分、芳香分子たちが空中を漂うことで私たちは香りを感じることができています。
精油の香りの分子は嗅覚を介して、本能をつかさどる扁桃体、記憶の貯蔵庫海馬などの大脳辺縁系という古い脳の部分に0.2秒という速さで働きかけます。
大脳辺縁系からは、生命を維持する生命中枢である《視床・視床下部》に情報が伝達され、自律神経系、内分泌系、免疫系に影響を与えます。
心地よい香りを嗅ぐと、ホッとして呼吸が深く、ゆっくりとなり同時に心拍数が落ち着きゆったりとリラックスした気分になるのはこのためです。
また、香りを嗅ぐことで脳に刺激が与えられ起こる感情にも変化をもたらすことができます。
先ほどまでイライラしていた、と思っていたのに心地よい香りを嗅いだ瞬間、すっと感情がリセットされることがあります。
あなたもそんな体験をしたことがあるのではないでしょうか?
精油の香りは瞬時に脳に働きかけて、
- やる気や記憶力、集中力を増す
- 前向きな気持ちになる
- リラックスし、おだやかな気持ちになる
- ロマンティックな気持ちになる
などの感情をコントロールするのにも一役買うことができます
呼吸により微量の香り分子が肺、全身へ
精油の作用経路2つ目は、『呼吸から肺、血液、全身へ』です。
精油の香り成分、芳香分子は空気中を漂い、呼吸で体内に吸い込まれ肺へと到達します。
この時精油の香り分子は、呼吸器へと作用し、最終的には肺の毛細血管から吸収されて血流に入ります。
微量ながら、精油成分は血液に乗り全身を巡り、最終的には代謝によって血液の中から 消失します。
皮膚塗布による香り分子の吸収
精油の作用経路3つ目は、『皮膚から血液へ』です。
植物油などで希釈したブレンドオイルを皮膚に塗ると、精油の芳香分子は吸収されることになります。
通常、皮膚はウイルスや細菌、付着物などを簡単にからだの中に通さないシステムになっています。
しかし、精油の分子はとても小さいので条件がそろえば皮膚から吸収され、毛細血管に入り全身をめぐる事になります。
この香りの分子は皮膚そのものにも作用し、そしてからだやこころに作用することになります。
4つのアロマテラピーの楽しみ方と注意点
アロマテラピーの楽しみ方にはいくつかの方法があります。
初心者の方は、まずは取り入れやすい方法から試してみてください。
芳香
沐浴
皮膚塗布
吸入
また、トラブルを避けるために、初心者にもわかりやすく注意点についてもまとめていますので参考にして安全に楽しんでください。
アロマテラピーの楽しみ方①芳香浴
アロマテラピー専用の拡散機などを使用して、精油成分、ハーブウォーターの微量成分を空気中に拡散させる方法です。
初心者の場合、「香りを楽しむ」という点にフォーカスでき、日常生活に一番取り入れやすい人気の方法です。
また、精油に慣れ親しんでいくと拡散のさせ方を変え、楽しむことができます。
例えば、
- 来客時、リラックスしたり、心地よい空間をつくる
- 眠りにつく前のリラックスタイムルーティン
- 風邪などの流行期の感染対策 などです。
芳香器の種類は、精油そのものを原液でセットし使うもの、水を入れて精油を数滴加え拡散するタイプの芳香器等様々です。
購入するときは、どちらのタイプか、確認するとよいでしょう。
水に精油を垂らして使うタイプの芳香器はお手入れが必要なので注意が必要です。
また、精油だけでなく、ハーブウォーターも、芳香器に入れ空気清浄の目的で使えるものもあります。
この方法で気を付けることは、
- 芳香器の連続使用時間
- ペットなどを飼っているご家庭
- 小さな子供さん、お年寄りのいるご家庭
- 芳香器のお手入法です。
特に、ペットを飼っている場合、拡散された精油成分は、ペットの呼吸器系にも影響を与える可能性があります。
また、噴霧され精油成分が床やペットの毛に付着する可能性があることを知っておくべきです。
ペット、特にねこの場合、相性の良くない精油もあり命にかかわることもあるので、注意が必要です。
アロマテラピーの楽しみ方②沐浴
精油やハーブウォーターを活用して、手浴、足浴、入浴などを楽しむことができます。
精油の種類を選ぶことによって、香りを楽しむだけでなくからだのケアの目的で楽しむことができます。
ここで注意することは、次にあげる精油の性質について理解しておくことです。
- 精油は湯には溶けない
- 精油は高濃度の液体
- 直接肌につけるには刺激が強すぎる
ということを知っておいてください。
そのため、精油を湯に溶かして使いたいときは専用の乳化剤を使用することをおススメします。
バスソルトなど精油を塩に混ぜて入浴剤として使用する方法がありましたが、これはお勧めできません。
なぜなら塩に、精油と水(湯)を溶かす性質はないからです。
精油の原液は水より軽く浮いてしまいますので塩だけ湯に溶けて原液の精油が首や胸元についてしまうことになります。
湯に浮いた精油が皮膚に付着し刺激が強く、トラブルを起こして皮膚科に通ったというケースもありますのでご注意ください。
また、ハーブウォーターは水と活性物質を微量に含んでいます。
そのため、精油のように専用の基材を使うことなくそのままお湯に入れることができます。
精油ほどは香りはしませんが、湯が柔らかくなるのを体験できます。
アロマテラピーの楽しみ方③皮膚塗布
アロマテラピーには、精油を植物油や専用のジェル基材やクリーム基材に希釈して皮膚に塗布する方法があります。
アロマトリートメント、ハンドトリートメント等はその代表例です。
筋肉の凝りをほぐし、血流を促進させ、植物油そのものの効果で保湿ができるなどのメリットがあります。
また、精油の持つ力とやさしいタッチングの相乗効果により疲れた心と体を癒し、幸福感を高め、人の持つ自然治癒力を高めるチカラがあります。
その他に肩や腰等の部分的なトラブルの対処や、風邪などの不快な症状をサポートするために、目的に合った精油を選び皮膚に塗布するという使い方があります。
ここで初心者さんが注意することは、皮膚塗布で人によってはトラブルを起こす可能性があることを知っておくことです。
人によって相性が良い精油とそうでない精油が存在する可能性があります。
使う前に、必ず、パッチテストすることをおすすめします。
アロマテラピーの楽しみ方④吸入法
鼻がむずむずしたり、咳が止まらない、のどがイガイガするなどの呼吸器系のトラブルの時に活用できる方法です
方法は簡単
コップに湯をそそぎ、目的に合った精油を1滴コップの中におとします。
蒸気とともに立ちのぼる香りを鼻からゆっくりと吸い込む方法です。
あたたかな蒸気が適度な湿度を与えること、精油の作用による相乗効果を期待します。
初心者さんへの注意点は、コップに顔を近づけすぎないこと、強く蒸気を吸い込まないことです。
精油成分の皮膚や目への刺激に注意しましょう。
また、蒸気を勢いよく吸い込むと、むせこみの原因となります。
ゆったりとした気持ちで拡散された蒸気を深い呼吸で吸い込むのがポイントです。
また、間違って飲んでしまうことのないようにコップの内容物の処理には充分に気を付けてください。
精油を選ぶとき、知っておくとよいこと
次に、アロマテラピーで使用する精油を選ぶとき、知っておくとよいことについてご紹介します。
精油は芳香植物の花や葉、樹脂、果物の皮(果皮)などから抽出した活性成分を高濃度に含有した揮発性成分です。
日本で手に入れることができる精油はおよそ200種類ほどです。
精油の原料となる薬用植物名によって含まれる薬理成分や割合が異なり、それぞれに香りの特徴や効果・効能があります。
アロマテラピーを行う時は、目的に沿って精油を選ぶ、というのがポイントになります。
そして、合わせてとても大切なことがあります。
それは、アロマテラピーを行う時は、香りが好ましいかどうかも大切にしながら選ぶということです。
精油の作用ばかりに目を向けすぎて、嫌いな香りでストレスをためないように気を付けてください。
ストレスは身体に負担をかけますよ。
また、世の中には精油とは異なった外見がよく似た製品があります。
『アロマ』と書いていても、植物から抽出したものではない人工的なものも香り製品では『アロマ』と呼ぶことがあります。
これらはアロマテラピーで使用する精油とは性質がかなり違うので気を付けるべきポイントになります。
アロマテラピーを効果的に使いたいという時は、「アロマテラピーに適した製品」選びからおこなうとよいでしょう。
アロマテラピー初心者さんには、見分けがつきにくいのでアロマテラピー専門店で製品選び、使い方などアドバイスを受けるとよいでしょう。
精油選びで注意することは次の通りです。
- 天然100%の精油、アロマテラピー用製品であること
- 学名と抽出部位(花、葉、果皮等)を確認する
- 遮光瓶(茶色、青)に入っていること
また、アロマテラピーを行う目的があるときは、その『目的』に合った精油を選ぶことも大切です。
香りが好みのもので、『目的』に合ったものを選択するのは初心者さんには難しいのでぜひ、アロマテラピー専門店か専門家に相談しましょう。
アロマテラピーを行う時の注意点
アロマテラピーで使用する精油は、ココロとカラダに作用する活性成分を高濃度に含有しています。
安全にアロマテラピーを行うには、精油の個性や取り扱い方を理解することがとても大切です。
また、アロマテラピーをおこなう時、注意したほうが良いケースがあります。
そのことをしっておくことでトラブルを未然に防ぐことができるので次の項目に該当するときは、専門家に相談するかアロマテラピーはおこなわないようにしてください。
- 精油を原液で塗布しない
- 精油を飲用しない
- 精油の使用量は5~6滴/日に抑える
- 皮膚が赤くなったり、かゆみがでたら即刻中止する
- 治療中、投薬中の方は使用しないほうが良い精油がある。必ず医師やアロマ専門家に相談する
- 妊娠・授乳中の方は精油選びに注意する
- 乳児・幼児、高齢者に使用してはいけない精油があるので精油選びは慎重に
- ペットは人間とは異なる生物で、精油はいのちを脅かすことがある
- 精油の種類(主に柑橘系)によっては塗った後、皮膚に炎症を起こすことがある。皮膚塗布後は太陽に当たらないようにする
初心者さんでも、このことを知っておくことで未然にトラブルを防ぐことができるようになります。
これらのことを踏まえて、楽しく安全にアロマテラピーを活用してください。
おわりに
いかがでしたか?
アロマテラピーとはどんなものなのか、イメージすることができたでしょうか?
人と、植物とのかかわりは紀元前からのお付き合いです。それからするとアロマテラピーの歴史は非常に浅いもので未知の部分もかなりあります。
アロマテラピーで使用するひとつひとつの精油の個性を知り、日常生活でうまく活用すると、良い香りで心地が良いという感覚だけでなく、生活の質をよくしてくれるという大きなメリットを体験することができるでしょう。
一方で、あまりよく知らずに使うと、トラブルを起こしたりすることがあります。
初心者さんは、必ず、使用する前には確かな情報を得て、専門家のアドバイスも参考にするようにしてください。
アロマテラピーを楽しく安全に使うことができ、私たちのココロとカラダの健康と、生活の質が上がるという恩恵があることを願っています。
精油を化学の目で読み解く、成分を考えて使う力をつける!
→NARD JAPANアロマテラピーレッスン