魔除けに効く?藤の花の香りと成分

アロマ

4月から5月 山々の緑に目を向けると、新緑の木々の間に紫の花を見つけることができます。

遠目で見ても「あれは藤の花だ」とわかるくらいの色をしています。

近年、藤の花と言えば、鬼滅の刃を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?

物語を象徴する「藤の花の香り」

これまでミチュールの記憶に藤の花の香りに関するものが全くなかったので「どんな香りがするのかな?」と、とても興味がありました。

先日、鹿児島の藤の名所、霧島市和氣公園の藤祭りに行ってきました。

今回は、その時の模様と、藤の花に魔除け効果はあるのか?

藤の花にまつわる話、そして香りについてアロマニア視点で書いてみます。

鬼滅の刃と藤の花

鬼滅の刃には、藤の花が鬼を退治する武器として描かれています。

藤の花の香りを、「鬼が忌避する」ため、藤の花は鬼を退治する「毒」として描かれています。

この藤の花の「毒」を最大限に使って戦うのが蟲柱の胡蝶しのぶです。

藤の花~藤とはどんな植物なのか

藤という植物はどんな植物なのか?見てみましょう

藤という植物について

藤の花の学名は(藤、学名: Wisteria floribunda、別名: ノダフジ)

マメ科フジ属のつる性落葉木本で日本の固有種です。

フジという名前は、風が吹く度に花が散るので「吹き散る」の意であるそう

日本では同属のものにヤマフジ (学名:W. brachybotrys)というものがあり、山でよく見かける樹に巻き付いている紫の色の花を咲かせているものはもしかしたらこちらの方かもしれません。

強い日光を好む植物で、日光を遮るものがない場所に木材や竹、鉄棒などで作った藤棚を設置し、木陰を作るのピッタリです。

とはいっても。(引用元

直射日光の差す場所を好む、好日性植物で、高木に巻き付いて登り、その樹幹に葉を広げる。
その枝は木の葉を被って日光を遮り、また幹は樹木の幹を締め付けて肥大成長を阻害するので、樹木は生長を阻害され、時に枯死する。

という特徴があり、これは高木にとっては、恐ろしい植物とも言えそうです。

藤(フジ)とヤマフジの見分け方は、藤は蔓が右巻き、ヤマフジは左巻きだそうです。

日本人と藤とかかわり

人の歴史においては、藤の蔓は繊維として丈夫なため、椅子やかご、ひもなどの生活に必要な道具に活用されています。

また、藤の繊維から布を織った「藤布」というものもあり、江戸時代までは庶民の仕事着やとして活用され、平安時代では貴族の喪服として使用されてきました。

観賞用としても愛され、平安時代から鎌倉時代にかけて藤の花の美しさを表現する記述が枕草子などでみられています。

栽培する歴史は古く、庭の藤を愛でる詩は万葉集に多く見られています。

恋の詩から、生活臭漂う詩まで、実にさまざまです。

藤の花はそれほど生活に密着した花だったんでしょうね。

藤の花の花言葉は、「歓迎」「恋に酔う」「忠実な」「優しさ」「決して離れない」です。

藤の花は食べられる?

結論として、藤の花は食べられますが、食べる際には、十分に注意が必要ということです。

若芽は天ぷらやお浸し、あえ物に、藤の花や蕾はエディブル・フラワーでシロップ漬け、酢の物などにすることができるそう

しかしレクチン(糖鎖に結合活性を示すタンパク質の総称)と呼ばれる毒性を含んでおり、大量に食べると吐き気や頭痛、めまい、胃腸炎を引き起こすといいます。

大量とは具体的にどれくらいの量なのか、記述はありませんでした。

その他、加熱されていない種は食中毒の危険があるとか。

「薄紫色の砂糖漬けかあ、綺麗だろうな~」と想像しましたが、あまり慣れていない方は詳しい方から習ってしたほうがいいですね。

藤の花の香りとは?

さて。

お楽しみの藤の花の香りについてです。

どんな香り成分が含まれているんだろう?とここはアロマニアらしく、想像しながら香りを楽しみました。

藤の花の香りの成分をアロマニア視点で

吹き抜ける風と共にほんのり、うっすらかおると甘い香り

やはり自分の過去の記憶には藤の花の香りは全くないものでした。

自分の嗅覚を頼りに、藤の花の香りには、「この香り成分が含まれているのでは?」と想像した香りがほんとにあっていたのかどうか?

早速、調べてみると、香りの成分(芳香分子)は、想像通りのものもあれば、そうでないものもありました。

文献によると、藤の香りの主な成分は、次のようなものでした。

〇ベンジルアセテート(酢酸ベンジル)

  • イランイラン ジャスミン クチナシなどに含まれる
  • プラスチック、樹脂を溶かす溶媒として使われる
  • シタバチの雄を誘引する

〇メチルベンゾエート(安息香酸メチル)

  • フルーティーな香りのあるエステル化合物。
    天然では、グアバやマンゴーおよびキウイフルーツなどに含まれる。
    ラズベリー、パイナップル、ストロベリーなどの食品香料、化粧品香料として含まれる。
  • セルロースエステル、樹脂、ゴムの溶媒として用いられる。

〇リナロール

  • 真正ラベンダー、ホーウッド、ネロリ、ベルガモットなど多くの植物のエッセンスに含まれる

〇ベンズアルデヒド

  • 芳香族アルデヒドの1種 杏仁の種に含まれる
  • 安価な香料として用いられる
  • 酸化されやすく、酸化されると安息香酸になる

もちろん、自然に生えている植物なので、土地や気候、環境によって香り成分はどこの藤の花も同じもの、とはいきませんが。

一般的に、上記のような成分が含まれているそうです。

この成分を眺めていると、あることに気づきます。

ビックリマークの女性

藤の花の香りにはどんな作用が?

調べてみましたが、藤の花の香り成分(芳香分子)の全体の割合などはわかりませんでした。

そこで単一の成分(芳香分子)から推察していくと、次のような香りの成分をグループ分け(芳香成分類)ができます。

  • エステル類:ベンジルアセテート(酢酸ベンジル)、メチルベンゾエート(安息香酸メチル)
  • モノテルペンアルコール類:リナロール
  • 芳香族アルデヒド類:ベンズアルデヒド

これらのグループ別(芳香成分類)で作用をみていくと

  • エステル類:主に、鎮静や、神経のバランスを調えるグループ
  • モノテルペンアルコール類:抗感染、免疫を調整するグループ
  • 芳香族アルデヒド類:強い抗菌作用が期待できるグループ
    となります。

さらに細かく香りの成分(芳香分子)で見て、総合的に推察すると、

藤の花の香りは、「鎮静」「リラックス」、「抗疼痛」「β-エンドルフィン作用」「抗菌」、「抗炎症」というキーワードが浮かび上がってきます。

植物のエッセンスの成分と作用について詳しくなりたい方はこちらへ
NARD JAPANアロマ・アドバイザーコースとは?

藤の花の精油は存在しない

藤の花の香りを香り成分からひもといて、人のからだへの作用をイメージすると、

深い呼吸で、香りを嗅ぐたびにリラックスし集中力が高まる

また不安感を払拭し、生きるチカラが湧く

そんなことをイメージしました。

これ、鬼滅の刃のイメージと不思議と重なっていますね。

そんな藤の花の香りを日常的に活用したいとき、どうすればいいのか?

アロマテラピーで使う精油の中に藤の花の精油は、いまのところありません。

精油の抽出法として主流の水蒸気蒸留法、溶剤抽出法で抽出するのは難しいということです。

現実世界では、藤の花のかおりは天然のものか、合成香料で作られたイメージの香水ということになります。

藤の花の香りの再現に成功し、香水を作成したリリースノートはなんと2012年のもの!その文献をみてみたい方はこちらへ→コーセー、藤の花の香りの解析と再現に成功

今では様々なメーカーが香水を作成しているようですね。

魔除けとしての藤の花

鬼滅の刃のストーリーの中では、藤の花が一年中狂い咲く山があり、藤の花の香りは鬼除けの香りとして登場しています。

どうしてそんなエピソードになったのか、特にはっきりとした理由はわからず、藤の香り成分からもそれをうかがわせるものはありませんでした。

しいて言えば、「強い抗菌作用」を示す成分があるので「それかな???」と結構無理やり感がありますが、いろんな想像が膨らみますね。

日本では古くより、藤の花には、魔除けの力があるとされてきました。

藤の発音が「不死」「不二」と通じることから、縁起の良い花だと考えられたのだとか。

一方、「不二の病」を連想させることから、病中の方には送らないほうが良い植物となっています。

しかし、たわわな藤の花房は子孫繁栄の象徴とされることもあり、おおむね縁起の良い植物としてとらえられています。

古来より、香りは魔よけ効果があると信じられており、神や祈りに捧げる者として扱われています。

そのため、香り高い藤の花は奇跡や幸運を引き寄せるといわれ、人に害をあたえるものや、悪霊などを取り除く効果があると信じられています。

おわりに

今回、藤の花を初体験したことから、アロマニア的視点で藤の花の香りについて書いてみました。

香りのよい植物の香りを使って人はココロとカラダを守ってきた歴史があります。

化学が発達して、香りの成分が解明されたり、合成香料として作る技術が発達している現代ですが、自然そのものの香りを忠実に作ることはできません。

植物が作り出す天然の香りを時には出かけて楽しみ、何も考えずにホンワリするのも良し、知っている知識で想像を膨らませるのも良しと、香りを楽しみ方は無限だなと改めて感じ入るところでした。

時には自然に還り、こうしていろいろ調べてみるのもいいものですね。

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